親亡き後、子どもの未来を考える
『自分が居なくなった後、発達障害を持つ我が子はどんな生活をしているのか?』
『その時に困らないためにどんな準備が必要で、今出来ることとは何なのか?』
『何を助けてもらえて、何を助けてもらえないのか?』
こういった質問が跡を絶ちません。
おそらく、これ以外にも気になることがあるかもしれません。
以降何度か取り上げますが、今回は親亡き後、お子さんがぶつかるであろう壁と、それに対する対処法について一緒に考えて行きたいと思います。
仕事のこと
一番はやはり仕事のことです。
日中何をして過ごしているのか?生計はどう立てて居るのか?
ということにも繋がって行きます。
発達障害をより深く理解するためのメルマガでも日本における行政が、発達障害者への支援として急ピッチで準備をしていることはお伝えしていますが、実際の現場の支援とお金の動きは乖離しています。
正直言って、行政(国)は『金だけ出しておくから個別の指導は各企業ですべき』であったり、『専門の機関を使って上手に支援してよ』と、お金を出しておけばいいスタンスであることが多いです。
では、実際発達障害を持つ方が働く現場はというと、発達障害のことを理解していないために、ご本人にとっては過剰なストレスであったり、負荷を受けながら働いている、あるいは退職に追いやられることがほとんどのようです。
逆に刺激がなさすぎる(注:発達障害への支援は基本的に刺激を減らし、することが視覚的に理解しやすい環境を作ることが最優先されるため)であるとのお声もお聞きします。
そもそも親亡き後に、定期的に仕事に行けているのか、あるいは、ご自身で問題を解決しているかというと、かなり厳しいことが多いようです。<ようです>というのは私が年間1000人ほどお会いする中ではということに限るからです。
大企業であれば、退職勧告を受けずに済むとは言え、いわゆる閑職であったり、ご本人にとってストレスが多い職場に転属させて自発的に退職をさせる場合も最近では増えてきているとお聞きします。また企業の吸収合併に伴い、人員整理させられることもあるようです。
いずれの場合でも仕事について、行政や企業が準備をしているのを待っていられるかというと正直厳しいというのが現状です。
お金の管理について
次に気になるのがお金の管理についてでしょう。
仮にですが、あなたのお子さんにADHD(注意欠如多動症)があるのであれば、衝動的なお金の使い方であったり、クレジットカードを持たせることにより、大きな買い物をしてしまうリスクは在りえます。
成人後見人制度等を使うことにより、一部リスクを避けることは出来ますが、早めにお金を使うことに慣れておくか、誰かに管理をしてもらうのか(それもご本人が納得する形で)は考えておいたり、準備をしておく必要があります。
細かい話になりますが、賃貸に住んでいるのであれば、近所とのトラブルや、契約、退去等の際に、不要なお金を搾取されてしまう可能性も考えなくてはなりません。
上記したように仕事をしているのであれば、それだけで足りない可能性であったり、障害年金のことも知っておく必要があるでしょう。
障害年金のこと
発達障害でも障害の度合いによっては障害年金を受給が可能です。また、同じように「等級」という言葉を使うため混同しがちですが、障害者手帳の等級と障害年金の等級や判定は全くの別物です。
どちらの等級も、重いものから1級、2級という等級がありますが、制度が異なるため認定基準は異なります。重なる内容が多いとはいえ、それぞれ状況が異なるので、相談・申請してみないことにはどの等級にあたるのかなどは分からない場合が多いです。またこれはご本人(やご家族)の意思で行うものなので、親御さんが生きておられるときに手続きをしていれば安心ですが、亡くなった後にお子さんが自発的にその情報にたどり着き、手続きを取ることは難しい可能性が高いです。
まずは実際に年金事務所や、無料相談を行っている社会保険労務士(社労士)などの事務所に相談してみることをおすすめします。生き改塾では社労士さんのご紹介も行っています。
お金の管理の大原則
発達障害を持つ方の場合、ぶつかる壁として大きいのが、メモリの小ささによる見通しの難しさです。
つまり、月の収入で20万もらったから、すぐに20万円使える!と思ってしまうのが(極端かもしれませんが)発達障害の特徴なのです。
そのため、家賃などの固定費
【固定費例】
・家賃
・保険代
・携帯電話代(パケット定額などの場合)
・ローン、借金
と、月によって変動する変動費
【変動費例】
・水道光熱費
・食費
・娯楽費
・雑費
などをちゃんと理解し、それをこまめに分けて使っていく必要があります。
よく生き改塾のサービスの一環としてお伝えしているのが、あらかじめ封筒です。
お給料をもらったら、まずは固定費の【家賃封筒】に5万円入れ、次に、【保険代封筒】に3万円入れ、というように上の固定費の項目ごとに封筒を分けて作り、先に入れてしまう方法です。
次は残ったお金を変動費の【水道光熱費封筒】に年間使っている金額の平均月額使用料を入れ、【食費封筒】は【食費封筒1週目】に12500円、【食費封筒2週目】に12500円、と4週間に分けて入れます。外食をする場合も封筒のお金を使い切ったら、もう後は塩むすびです。これくらいまでして、初めてお金の使い方を学習してくれます。
余談ですが、給料の中から預貯金をする場合は、私の場合は固定費の1つとして【貯金封筒】を作りそこに1万円ずつでもいいので、先に入れることを教えています。
こうすることでいざというときに使えるお金を貯めておくことを学習するのです。
メモリが小さいために先のことを考えて、今どのくらいまでなら使っていいかを考えることは苦手なので、給料日に実際のお金を手元に置き、封筒に入れていくことを習慣化付けることをお勧めしています。慣れてきたら、固定費=クレジットから自動的に引かれるお金と位置づけ、通帳の残高で「これだけは必ず残しておく金額」を決めて、残りのお金を引き出し、上記の変動費のところから始めたらいいでしょう。
最初は現物で練習が一番だとお伝えしています。
トラブル時には
お金の項目でもお伝えしましたが、全ての状況をあらかじめ網羅して、準備しておくことは難しいです。
ですので、困ったことが突発的に起こった時のことは、『まず、この人に相談するのよ』ということを伝えておくことが大事です。
それは後見人であることもあるでしょうし、ご家族、親戚のこともあるでしょう。
一番やってはいけないのが、その場で何かしらの判断を下してしまうこと。
例えば痴漢の冤罪(濡れ衣)を着せられて、それを晴らそうとするために、警察についていくだとか(正解はすぐに弁護士に連絡をする)、近隣トラブルの場合、直接伝えに行くとヘタをすると怪我をしたり、さらに騒音を立てて来るなどひどくなる場合があります。すぐに判断せず、困った時に相談出来る相手で、しかも親御さんであるあなたが信頼を置ける人を必ず数人はご本人と繋いでおくようにしましょう。
最後に
お金の項目でもトラブルの項目でもお伝えしたように、今の日本の行政は発達障害の個性を社会や企業に合わせさせることに目が向きがちなようです。
また私も知っている一部当事者団体は権利を過剰に主張しすぎてしまうために、煙たがられているのも知っています。
適度な支援というのは本当に難しく、親亡き後というのは本当に心配なことが多いかと思います。
そのためにも、コミュニケーション力については、最低限困らないだけのものを持ち、またお金の稼ぎ方がいくつかあることについては最低でも知っておき、ご本人が選択出来るようにしておくことが、本当の親亡き後に、発達障害を持つ方ご本人が困らないためには必要ではないかと考えています。