困り感が本人にない場合の対処法
これは、ご本人というより、保護者や学校の先生、支援機関のスタッフからよく質問されることです。
もしも困り感がご本人にない場合、あるいはご家庭に発達障害と気づいておらず、学校や支援機関での不適応行動から発達障害が疑われる場合、どのように診断に繋げたらいいのかということについてご相談を受けます。
よく私たちが支援をする際に困り感がない方と相対したときの対処法を今回はお伝えしたいと思います。
誰が困っているかを明確にする
支援の大原則ですが、困っていない人に支援を申し出るとかなり高い確率で拒否感を示されます。
例えば、ご本人の不登校、引きこもり、ニートでのご相談から、ご本人と面接をすることがあります。その際に、本人は全く困っていないということもあります。
なぜなら、既に閉じたコミュニティではありますが、ネットと食と住が保障されており、登校したり、働く必要性を全く感じないからです。
こういった場合は、ご本人とも会うチャンスがあるのなら会う方がいいですが、そこは関係性構築や情報収集に勤め、困っている人、すなわちご家族に対して支援をした方が効果が高いです。
上記の例であれば、<ご本人のネット環境を与えたのはなぜなのか?>お聞きしたとき、保護者は『以前ゲームを取り上げた時、家が壊れるほど大暴れしたから怖くて取り上げられない』とおっしゃっていました。
前述したように発達障害を持つお子さんに誤学習をさせてしまう(今回の場合は暴れたら自分のワガママが通った)と、後の軌道修正が大変になる場合が多いです。
そのため、環境調整として望ましい具体的な方法を保護者に伝えて行くことが、支援の効果として高いことになります。
当然ご本人にニーズがない場合、支援を継続的に受けることが減っていき、徐々に支援を受けられなくなるということは言うまでもありません。
変化や成長を受け入れるのは困っている人ということをまずは認識しましょう。
解決したい【ニーズ】があるのかを明確にする
これは少し心理学のことを学んでいると出てくるテーマなのですが、疾病利得という言葉があります。
要は病気であることで得ている利益がその人にある、ということですね。
例えば頭が痛いと言えば学校に行かない正当な理由になる場合もありますし、逆に両親が離婚したばかりで、学校に行っている間に自分がもう片方の親からも捨てられて居なくなるのではないか?と考えているなら、学校に行かず、親の帰りを待っていることは、学校に行くより安心が出来ることになります。
それぞれ事情はあるかと思いますので、細かい事情はお聞かせいただけたら、その解決ニーズがありそうかどうか、そして次の項目になる困り感を持たせる方法についてお伝えさせていただいています。
ニーズ・困り感を持たせるには
困り感が既にある人は全く問題ないのですが、困り感をお持ちではない方については、一工夫必要です。
これまでの例で言うなら、不登校引きこもりニートの彼は困っていなかったので、ご家族支援からどのように困り感を持たせるかですね。
簡単に言うなら、ネット環境含めて取り上げてしまうことですね。
ネットを止めてしまい、その分のお金を自分で稼ぐ。そのためには働く必要があることを理解してもらう必要がありました。
ただ根っこにはご家族が本人と向き合うことが怖いというのがありましたので、次善策として、一家全員で引っ越すということも提案させてもらいました。
今後一生ご本人を養っていくことを考えるなら、引っ越し代金そのものは一時的なものなので安いと考えます。ただこれは、実際に引っ越しすることが大事なのではなく、ご家族が『他に取れる手はあるので今は最悪ではない』と認識することが大事なのです。
一番恐れるべきは、『もう最悪で逃げ場がどこにもない。今の状況を変える手段はどこにもない』とご家族が感じてしまうことです。それを、自分が腹を決めれば他に取れる手段は他にもあること、ここを認識することで、見え方や対処法が変わってきます。
困り感を持たせるには環境調整からというアプローチも有効であり、その環境調整をするのは、困り感を持っている人だけなのです。
最後はご家族の問題と割り切る
これは学校など支援機関にお伝えしていることです。
発達障害、知的障害含め、学校で勉強についていけない、友人とうまくやっていけないことは、先生としてはなんとかしてあげたいことだと思います。
一方でご家族に困り感がない場合は、正直今は伝えるタイミングではないときもあります。
困り感がない場合、ご本人の学校の様子をフィードバックして、今後困るであろうことをお伝えするのはありですが、具体的な方法まで提示すると、保護者対学校という構造になりかねません。
そうならないためには、最後はご家族が責任を取ることであり、それ以上踏み込む必要も、改善のために努力はしても結果にまで責任を取る必要はない、と割り切ることも必要です。
まずは、誰が困っていて、問題解決のチームが組めそうかを考え、困り感を持たせるための具体的な方策を立て、少しずつアプローチしていく、そういうことを心がけてみて下さい。